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【社説】 「うっかり寝込んでしまい、目が覚めたら北朝鮮にいた」

 1978年8月に全羅北道群山近郊の仙遊島海水浴場で行方が分からなくなった金英男(キム・ヨンナム)さんが27年11カ月ぶりに北朝鮮で姿を現し、母との対面を行った後で記者会見を開いた。そして自分は北朝鮮の工作員に拉致されたわけではなく、事故で海を漂流し、北朝鮮に渡ることになったと説明した。

 チンピラのような先輩が女友達に貸した録音機を返してもらってこいと殴ったため、しばらく隠れていようと木製の小船に乗ったがうっかり寝入ってしまい、目が覚めてみると大海原に浮かんでいたという。

 そしてちょうど通りかかった北朝鮮船舶に救助され、北朝鮮に行ってしばらく滞在しているうちにそこでの生活が気に入ってそのまま暮らすようになり、今は党の懐に抱かれ、ほんとうに幸せに暮らしていると主張した。

 前妻の横田めぐみさんが北朝鮮当局の発表したように1994年に病院で自殺したのは確かで、日本側に引き渡した遺骨も横田めぐみさんのものに間違いないとし、日本側で持ち上がっている疑惑を一蹴した。

 金さんには、このように話す以外に選択肢がないのだろう。そうした事情を理解できないわけではない。

 本当に悪いのは、金さんの背後でこうしたでっち上げのシナリオを読み上げるよう強制した人々だ。

 エンジンのない木製の小舟が群山近海から南北境界線までの数十、数百キロを自然に流されたという話を誰が信じるだろうか。もしそうではなく、キムさんの言う「目が覚めてみたら大海原だった」というその場所が群山からさほど離れていないところだったとすれば、それは北朝鮮の船舶が特定の目的を持って南方限界線を越えてきていたと自白したことになる。

 また、それほど幸せに暮らしてきたという人が、自分の行方が分からなくなって母がどんなつらい思いをしているかを知りながら、30年もの間1通の便りも送らなかったということがあり得るだろうか。

 話しているキムさんも、聞いているわれわれも、やるせない気分でいっぱいにさせられる、間の抜けた演劇のような会見だった。

 韓国政府はこの「茶番劇」を観覧して、これからどうしようと考えただろうか。「ああ、そういう事情だったのか」と言いながら、平然とまた背を向けてしまうのだろうか。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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