【社説】北朝鮮が送りつけてきた告訴状の「人権」と「民主主義」
1994年と2000年、南側から北朝鮮に送還された非転向長期囚(韓国国内でスパイ活動やゲリラ活動をしたとして捕まり、その後も政治的転向を拒否して長期間、服役した北朝鮮出身者)たちが今月6日、「南朝鮮の独裁政権が、われわれを数十年間刑務所に閉じ込め、苦痛を与えたことに対し、その政権の後継者であるハンナラ党は10億ドル以上を補償しなければならない」とし、韓国の人権委員会と過去史整理委員会宛てに共同告訴状を送ってきた。
これほどの茶番があるだろうか。いわゆる非転向長期囚とは、大韓民国の体制を転覆することを目的に北朝鮮から送り込まれ、大韓民国の破壊活動に携わった者をさす。
第一に、北朝鮮にも非転向長期囚などというものが存在するだろうか。北朝鮮の体制が、その体制の破壊活動を行った人々を「非転向」のまま、「長期囚」としてでも生かしているだろうか。とっくに公開銃殺していることだろう。
北朝鮮が韓国戦争(朝鮮戦争)当時、北朝鮮に連れて行った南側の人の数は8万人に及び、韓国戦争以降、北朝鮮が強制的に拉致した南側の漁船乗組員も450人に及ぶ。
彼らは北朝鮮の体制への破壊活動を行ったわけでもない。数万人の罪のない人々を連れて行って殺したり、数百人の善良な市民を強制的に拉致して本人とその家族に言葉で言い表せない苦痛を与え、家庭を崩壊させたのは、紛れもなく北朝鮮政権の方だ。
昨年11月に国連総会は、北朝鮮を「拷問と公開処刑、外国人の拉致、女性の人身売買、強制堕胎、嬰児殺害などが行われる国」と位置付けた。北朝鮮当局は、脱北する途中で捕まった北朝鮮の住民たちを収容所に監禁して公開処刑に処したり、生体実験の対象にしているとの証言も出た。
その北朝鮮が「人権と民主主義に関する国際法」を引き合いに出しながら、「ハンナラ党と朴槿恵(パク・クンヘ) 代表に歴史の審判を受けさせるべき」と主張しているのだ。
韓国戦争当時の拉致被害者とその後に拉致された乗組員の無念さを訴訟で解決するには、数千億ドルの訴訟を起こしても満足させることはできないだろう。また、無念の想いを抱いている拉致被害者の家族が、“あの党”や“あの人物”を「歴史の審判」ではなく、「現実の法廷」に立たせたがっていることは言うまでもない。
北朝鮮が人権委員会や過去史委員会を選んで告訴状を送ったことは、彼らがこの両組織を完全に「自分の味方」と考えているからかもしれない。ある人権委員は「北朝鮮の公開処刑が事実であっても、南側でも人民革命党事件(1974年、北朝鮮による地下組職との判決がなされ、被告人8人が確定判決の20時間後、処刑させられた事件)や5.18光州虐殺事件など、数多くの人権弾圧事件が行われた」とし、北朝鮮の収容所体制を弁護するような態度まで見せたことを考えると不思議なことではない。
さらに、北朝鮮がこの告訴状を過去史委員会宛てにも送ったのは、北朝鮮も現政権が何を目的に過去史の整理を行おうとしているのかを、見抜いているからではなかろうか。
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